児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ボトルクリーク絶対絶命

 

ボトルクリーク絶体絶命

ボトルクリーク絶体絶命

 

 船の家で暮らし、リバーガイドをしている父さん。この土地のことや川のことならなんでも知っている。13歳のコートは、小さいころから父さんにいろいろなことを教わっていた。だが、最近父さんはおかしい、別れた母さんが忘れられなくて、相手にされないのに母さんのところに通い詰めてボーっとしている。二人のボートを係留させてくれているのは、幼馴染のライザの土地だ。代々この一帯を所有していて、父さんは土地の管理をすることで無料で住まわせてもらっている。明るくてきれいなライザは、いつも親切だがコートは最近自然に接することができない。ライザの妹フランシーも、人懐っこくて無邪気だし、二人のお母さんはいつもコートのことを気にかけてくれている。折から巨大台風が近づいてきて、コートと父さんは備えをするが、台風が来る直前に、例によって父さんは母さんの所へ消えてしまった。ライザのおかあさんが迎えに行ってくれるが倒木で帰れなくなり、さらにフランシーがコートの飼い犬を心配して見に行ったまま行方不明になってしまう。死に物狂いでコートとライザはフランシーをさがし、犬とともに船(いつも暮らしている)に乗り込んでしまったところにたどり着くが、船は座礁。コートは、この辺で一番の高台をめざす。だが、そこは、湿地の動物たちが集まる場であった。水から逃れて這い上がってくるアリ、狂暴化して暴れる野生豚、逃れた木の上にはいあがってきたヌママムシ。父さんから教えてもらった知恵を駆使して、二人を守ろうとするコート。だが、ライザがヌママムシに噛まれてしまう。3人がここにいることを誰も知らない。コートは助けを求めて独力で戻ることを決意する。蛇の毒で狂暴化した野生豚、川にあふれるワニ、ちょっと盛りすぎ?という感じだが、水に追い詰められた動物たちがわずかな高台に集まるのは実はリアルな気がする。スーパーヒーロー的なコートの働きは、あとがきにもあったけど洪水版「ダイ・ハート」でした。

バイキングの墓の宝

 

バイキング墓の宝 (評論社の児童図書館・文学の部屋)

バイキング墓の宝 (評論社の児童図書館・文学の部屋)

 

 病気に襲われたインディアンの部族をすくうために、力を合わせた3人の少年の物語。白人のジャミー、インディアンのアワジン、エスキモーのピートヤクは、援助の手を差し伸べようとしない白人に対し、バイキングの遺跡物でお金をつくることを考える。そしてアワジンの妹アンジェリカも加わり、ツンドラを横切る大冒険が始まる。インディアンやエスキモーの生き方をよく調べた力作。

モホ・ワット 少女を救った少年の物語

 

モホ・ワット―少女を救った少年の物語

モホ・ワット―少女を救った少年の物語

 

 モホ・ワットは、クーガーに襲われて片手を失った。だが父は少年を励ます、お前は片手を失っても、生命は失なわなかった特別な少年だと。偶然見つけた羊の角を柔らかくして弓にし、片手で弓を射る訓練をして、少年は部族の中で居場所を得る。そして心惹かれた少女、ウィンド・フラワーが乱暴な谷間の部族にさらわれた時、少年は、たった一人で少女を救う決心を固める。ハンディを乗り越えていく少年の姿がさわやか。

バンドガール

 

バンドガール! (偕成社ノベルフリーク)

バンドガール! (偕成社ノベルフリーク)

 

小学生が自分たちのバンドを作る物語。主人公の小学校5年の沙良は、人数がたりなくてミニ・バスケのサークルが作れなくて落ち込んでいた時、バンドのドラムに誘われる。初心者で自信がないが、仲間に励まされて、練習を重ねるうちに徐々に上達してきた。実はバンドリーダー莉桜は、去年まで仲間だった涼香と意見が割れ、それぞれがバンドを組んだのだ。涼香のドラム友麻は、優秀で沙良はますます自信がなくなるが、やはり涼香チームの同級生漣がきっかけで仲良くなる。最後の発表で、2チーム合同で曲をやって莉桜と涼香が仲良くなれないか、と考え、偶然見つけた「忘れられたうた」を歌おうとするが、その歌は禁止されていると止められる! 微妙にあれ? と思わせ、舞台が震災と原発事故で人口が少なくなった近未来だということが徐々にわかってくる。北海道に首都が移り、現在は移住制限がかかっていて簡単には移れない。だが、沙良の住んでいるところでは、物資も乏しく、職業選択も限られているという設定だ。残念なのは、荒廃した街の問題のリアルさが薄いのと、禁じられた曲という設定が、なんだかフニャフニャな、禁じられているようないないようなみたいなところかな。そこそこは読ませるが、そこまで・・・。 

かぎあなの秘密

 

かぎあなの秘密

かぎあなの秘密

 

 上野瞭っぽい世界。騎士としてドヴット島というもう一つの世界に行ったジェーニャは、伝説の怪物ヤシシェルに挑戦するが、オオダコの形をした怪物の恐ろしさに逃げ出す。そして、ヤシシェルは、この恐怖を使った独裁政治のからくりを知ることになる。人を無気力化するために巧妙にしくまれたヒーローの登場。ジェーニャは、はみだしの子どもたちの仲間になり、一時は安らぐが、その砦も見つかってしまう。そしてヤシシェルを倒すことでも終わりがこないことを知るのだった。

子どもへのまなざし

 

 

子どもへのまなざし (福音館の単行本)

子どもへのまなざし (福音館の単行本)

 

満たされた子ども時代を送ることの大切さを、豊さゆえに、我慢ができなくなった現代社会を生きる親に懸命に伝えようとしている。甘やかすからダメになるのではなく、「甘え」が自分を認めてほしいというサインであること。小さいときに手をぬけば、大きくなってそれをとりかえすのがどんなに大変かが、児童精神科としての説得力をもって書かれる。 親によりそうやさしい視点が魅力で、読むと心が落ち着く。

こぶたのピクルス

 

こぶたのピクルス (福音館創作童話シリーズ)

こぶたのピクルス (福音館創作童話シリーズ)

 

 小風さち氏は、わにわにシリーズが魅力的だが。こちらのシリーズは、ていねいにまとめているが展開は、ちょっと大人目線な気がした。登校の途中で、牛乳屋さんやパン屋さんの配達の忘れ物を届けてあげるが、自分が学校に行くのを忘れてしまった! などというのは、大人目線だとかわいいけど、当人はけっこうショックだし、読んでいる子も、真剣に読んだらかなり心配だと思う。海に行く前夜にはしゃぐ姿なども、子どもアルアルだが、なんとなくそこで終わっているようで物足りなかった。