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砂漠の王国とクローンの少年

 

砂漠の王国とクローンの少年

砂漠の王国とクローンの少年

 

 マットはケシ畑の中の小さな家でシーリアと暮らしていた。決して家から出るなと言われていたが、子どもたちにつられて外に出たとたん「クローン」だという罵倒される。みんなは穢れたもののようにマットを忌み嫌うが、所有者マテオを恐れ、丁重に扱ってくれる。マテオは麻薬の栽培で財をなし、難民を捕えては、頭にチップを埋め込んで従順なイージットとし、砂漠の王国を作り上げていた。マットをクローンとして差別しなかったのはやさしいマリアとボディガードのタム・リンそして乳母のシーリアだけ。自分がマテオの部品でしかないことを知り脱出するマットだが、そこでも規律のきびしい孤児施設で酷使される。だが、初めての仲間との友情を得て、再び脱出。そしてマテオが一族を道連れに滅亡したとき、新たに王国を再生しようと決意する。極貧からはいあがったマテオをもっと書き込んだらおもしろかったかも。クローンの描き方の背景もちょっと甘い。だが、謎解きのスリルは充分ある。