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木曜日に生まれた子ども

 

木曜日に生まれた子ども

木曜日に生まれた子ども

 

 オーストラリアの開拓地に住む家族の中で、弟のティンは穴を掘ることだけにのめりこんでいった。農業のやり方もわからず兎猟だけで暮らす父。人がよくだまされて牛を売りつけられ、金持ちに逆らえず、家が倒れたのをきっかけに酒浸りになる父。希望のなさに打ちひしがれていく母。家族は次第にバラバラになり、ティンは野生児と化した。だが、ギリギリの時に姉の危機を救い、家族に掘り出した金塊を渡しにあらわれ、以降永久に姿を消した。次々とトラブルに見舞われて堕ちていく父と、地中に掘り進められる穴のイメージが重なり絶望的な雰囲気が漂うがが、つい読んでしまう。金が手に入ってもハッピーエンドではなく、ティンは掘りつづけているのが、むなしいせつなさを呼び起こす。