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浮き橋のそばのタンムー

 

浮き橋のそばのタンムー (ポプラせかいの文学)

浮き橋のそばのタンムー (ポプラせかいの文学)

 

 タンムーは10歳の男の子。名前の由来は、なんとお母さんが「トムは真夜中の庭で」を読んだせいで、中国語だとトムは「タンムー」なのだ。ある日、過保護なお母さんが両親の留守中にどこにもいかないように閉じ込めたことに起こったタンムーは、窓から出て、塀をつたって冒険に出る。偶然見つけたあいている窓から入って、宿題を直すいたずらをして楽しんだ後「タンムーを夏休み前に殺せ」という相談を聞いてしまった。夏休みまではあと3週間。しかも、タンムーが他の人に話せば、その人も危なくなるといっていたので、誰にも話せない。タンムーの父親は、弁護士で、その事件の関係で危険な場合があるかもとあらかじめきかされていた。父の事件の関係なのか? ひょっとするとあと3週間の命?という緊張の中で、タンムーは気づくといつもとは違う行動をとっていた。ふだんならしないようなことも思い切ってしたり、むちゃな喧嘩をしたり。物語は、実は「タンムーを殺せ」というのは劇の練習だったというオチにはなるが、いたずらだけどまじめなタンムーの素直な心の揺らぎがいい感じ。ナルニアやハリポタも読んでいるタンムー。喧嘩をよしとしない先生など、中国のイメージがちょっと変わる。すぐ隣のまちの男の子のような親しみを感じられるのが、文学の力かも。