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右手にミミズク

 

右手にミミズク (フレーベル館 文学の森)

右手にミミズク (フレーベル館 文学の森)

 

 「フレーベル館ものがたり新人大賞」受賞作。主人公の丈(タケル)は、6年生にもなるのに右と左がわからない。ある日バレてしまうが、友だちのソウシもコウも、自分たちにもよくおぼえられないものがあるからと言って励ましてくれる。それを近くで聞いていた転校生してきたミノリは、手を出せといって手のひらに右と左といきなり書いた。ぎょっとするタケルだが、意外に便利。そして常にマイペースのミノリも気になる。文字が消えてきた時、また書いてと頼むと、右手のミのミミズクだといってミミズクの絵を描いてくれた。タケルの両親は牧場で食堂をやっているが、よく来る親子連れがちょっと気になる。父親は間違ったことを言うわけではないが、キレて怒鳴りつけるように注意する男で、まだ幼稚園児くらいの男の子を連れているが、その子にも威圧的だ。タケルは、その子のおびえた様子がちょっと心配だ。偶然のことから、その父親がミノリの父でもあり、ミノリがいつも怒鳴られている母を連れて逃げたいと考えるほど悩んでいることをタケルは知る。運動会のクラスの旗を二人で作る担当になったことからタケルはミノリに手を貸してあげたいと感じ、その中で、浮いていたミノリをクラスメートたちも徐々に受入れていく。実は、父親がそれなりにいい面があるとわかり、しかも単身赴任してくれることで解決(?)する。全体に丁寧に描かれているのだが、なんとなく「創作」という感じで今一つ。タケルの症状を調べると「ゲルストマン症候群」の可能性があり、ひょっとすると軽度とはいえ他にも症状が出ている可能性はないのだろうか? と思った。(本人のせいでも、頭が悪いなどとは違うハンディとして)。また、父親の母親への態度は、明らかにDV。弟は、どなられながらもお父さんを慕ってもいるけど、注意しないと大きくなって、母親や姉に父親そっくりに怒鳴り散らす男になるのではないかとちょっと心配。子どもにとって、夫婦喧嘩は本当につらい。その切実さが、ミノリをして母親と家を出たいと思わせるほどだっただろうに。つらくてイヤなのは正常よ。お父さんにいいところがあっても、怒鳴り散らしてうっぷん晴らしをする父親は、あきらかに問題。許さなくてもいいからね!