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炎に恋した少女

 

炎に恋した少女 (SUPER!YA)

炎に恋した少女 (SUPER!YA)

 

 『ヴァイオレットがぼくにのこしてくれたもの』の作者だが、前作同様、勢いはあるけど微妙な欲求不満を感じた。

アイリスはニューヨークに住む16歳の女の子。母親のハナも義父のローウェルも見かけだけを飾り、お金が大好きな人種だ。アイリスの救いは火をつけることだけ。偶然出会った路上アーティストの19歳のサーストンとの交流だけが心の救いだ。だが、サーストンとちょっとしたケンカをしたのち、急に一家はイギリスに行くことになる。幼児のころ別れて記憶のない父アーネストに会うために。彼は死の直前で、ハナは彼の財産が欲しかったのだ。反感を感じていたアイリスだが、アーネストは弱さはあるが魅力的で優しい父であることに気付く。二人は心を通わせるが、最後の日は近づいていた。アイリスとサーストンの友情、アーネストの過去が語られ、最後にアーネストは息を引き取る。そして全財産を手にするつもりでワクワクするハナに強烈なしっぺ返しが待っている。これって、映画の原作にするといいんじゃないか? サーストンのパフォーマンスとか、燃え上がる炎とか、アーネストの子ども時代の姉マーゴットとの回想シーンとか・・・。だが、残念ながら読みものとしては粗がめだつ。子育てに興味ないハナが、なんでアイリス連れて出たの? 養育費も出させずに??? 金の亡者なら絶対養育費めあて設定にするな、私なら。アーネストも贋作で儲けてて平然としてていいつもり? なんだかポップだけど詰めが甘い感じは『ヴァイオレット・・・』と共通したものを感じる。最後まで気をそそるけど、やったね! とラストで喜べないのは私が年老いたせいなんだろうか?