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サーカスは夜の森で

 

サーカスは夜の森で (あかね世界の文学シリーズ)

サーカスは夜の森で (あかね世界の文学シリーズ)

 

 不況のあおりでサーカスが解散。サーカスで育ったベルとチャーリーは、叔母のところから学校に通うことになり、ベルの両親はアメリカのサーカスで働くことになった。チャーリーの両親は交通事故で亡くなりベルの両親に引き取られたのだが、勝ち気で美しいサーカスのスターだったベルはチャーリーのあこがれだった。だが、ベルは禁止されていた高所の綱渡りに勝手にチャレンジして足を滑らせた。なんとかしがみついたベルをチャーリーは救うが、ベルは美しい顔を切ってしまい、恐怖で芸ができなくなってしまう。学校がはじまるまで農場で過ごすことになった二人と象使いマーフィーさんと老いた象テシー。マーフィーさんが病気で倒れ、引き取り手のないテシーは、ペット用の飼料加工工場に送られることになった。テシーを助けたい。沈んでいたベルの思いに火が付く。なんとかサファリパークね象を連れていってもぐりこませれようという無謀な計画を建てチャーリーは巻き込まれていく。周到な計画。だが、なにしろ目立つ象を連れての逃避行は困難の連続となる。冒頭とラストに同じシーンを置くなど巧みな構成がされており、またテシーのために動き出したことで、ベルが成長する様子も自然で魅力的に描かれている。多少出来過ぎのところがありつつも、森の中で出会ったアウト・ローを自称していた少年たちの行き場のなさの現実感が余韻となっているところがいい。