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マルコヴァルドさんの四季

 

マルコヴァルドさんの四季 (岩波少年文庫)

マルコヴァルドさんの四季 (岩波少年文庫)

 

 都会に住み、会社で下積みの仕事をしながら、どこか夢見ているようなマルコヴァルドさん。思いが先に行きすぎて夢破れる姿は、児童文学としてはちょっと切なく読者を選ぶと思うが、マルコヴァルドさんに心を寄せる子が確実にいそうな気がする。薪をさがした子どもたちが見つけた「高速道路ぞいの道」のちょっとはらはらする結末、霧の中で道を見失った末に飛行機でフライトしてしまう「まちがった停留所」などを見ていると、カルヴィーノはやはりこの世で生きることが間違いであるかのようにいつもちょっと戸惑っているマルコヴァルドさんが好きなんだろうなぁと思わされる。挿絵が、物語ととても相性がいい。

ちなみに、原書を見てみたら文法的に難しい用法が多用されていて、これはイタリアでもヤングアダルト向きだろうと思いました。この不思議な雰囲気を出すのは単純な直文ではでないんでしょうね。