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さすらいの孤児ラスムス

 

さすらいの孤児ラスムス (岩波少年文庫)

さすらいの孤児ラスムス (岩波少年文庫)

 

 孤児の家で暮らすラスムスの夢は、本物の家庭の子どもとして引き取られること。だけどラスムスや親友グンナルには無理な夢だ。引き取られていくのは、たいていちぢれ毛の女の子ばかり、針金みたいに髪の毛が突っ立っているラスムスもだんごっぱなのグンナルにも望みはない!

そして、よりによって素敵なご婦人が子どもを探しに来た日に、ラスムスは、続けざまにへまをしてしまった。ふざけているうちヒョーク先生に洗顔の水をぶちまけ、ご婦人の前では緊張して失礼な態度になってしまったのだ。先生はカンカンで、明日の朝来いという。ぜったいむちでぶたれる!

今まで一度もぶたれたことはないけど、本当にいけないことをした子どもはぶたれるんだ。ラスムスは、逃げ出すことを決意する。グンナルを誘うが、冗談だと思って相手にしてくれない。結局一人で逃げ出すが、9歳の男の子にとって夜は恐ろしいところだった。

やっと見つけた小屋に入り込んで寝たが、朝になって、先客がいたことを知ってびっくりする。風来坊の男オスカルだった。いかにも優しげで、パンを分けてくれたオスカルに、ラスムスは、自分がお父さんとお母さんを見つけるまで、連れて行ってくれるように懇願し、二人の気ままな旅が始まる。

ところが、折から二人組の強盗があたりを荒らしまわり、風来坊のオスカルも警察の尋問にあう。無事すぐ放してもらえたが、直後、ラスムスは本物の強盗がオスカルに親切だというおばさんの家にいる現場を見てしまう。ラスムスは孤児院から逃げて警察に探されているので警察に行けない。おまけにその家の女中は強盗とグルで、オスカルに罪を擦り付けた。なんとか手紙で事情を伝えようとするが、トラブルが重なり、手紙がうまく届かない中で、二人はどろぼうと対決することになる!

緊張と、無事に解決した安心感の後に、まだ残っていたラスムスの引き取り手の問題が残る。親切な農家の夫婦がラスムスを養子に、といってくれるが最後の瞬間に「オスカルじゃなくちゃいやだ!」とラスムスは追いかけていく。そして貧しいながらも、オスカルに家とおかみさんがあったことを知るラストは、やはりとてもうれしい。

途中、オスカルが誤解され、無実の証明がなかなかできないあたりはちょっともどかしく、読解力の弱い子だと、ここでちょっと混乱するかもしれない。また、放浪者オスカルを日本で見かけるホームレスのようにイメージすると、ちょっとおはなしにのれないかも、という点も気になった。だが、ラスムスがすてきな家庭にあこがれ続け、最後にオスカルとのしっかりした絆が生まれるラストはやはり魅力。