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思い出をレスキューせよ!”記憶をつなぐ”被災地の紙本・書籍保存修復士

 

 東日本大震災の被災地、岩手県大船渡市で”思い出”を救うために活動した人がいました。「紙本・書籍保存修復士」そして「製本家」である金野聡子さんです。
津波をかぶった写真や個人所蔵の貴重な古書などをできるだけ早く洗浄し修復しなければと、震災発生の1週間後から動き出した金野さんでしたが、人命優先のときと当初は理解を得られません。本格始動したのは1か月後。津波での汚れは、重油、砂やヘドロ、し尿など深刻です。海水の塩分で乾きにくかったり、カラーと白黒で異なる写真用紙に合わせて洗浄方法を変えたりなど、様々なことに苦労し細心の注意を払い、ボランティアを指導しながら、2013年11月の時点で44万枚以上の写真を洗浄し、およそ90%が持ち主の元へ返却されたといいます。
本書前半では、金野さんがイギリスの大学の紙本修復学部や夜間大学の製本講座で学び、日本の筆や和紙が修復作業に重宝されたというエピソードなども紹介され興味深い。                            (ふ)