「エルマーのぼうけん」の背景にはこういう人がいたのか! と楽しくなる評伝。1923年(第二次世界大戦前!)に生まれたが、母親もプロのジューナリストという家庭でリベラルな価値観で自由に育てられる。おもしろかったのはたっぷりよみきかせをしてもらい、お話を作って語ると幼稚園の先生が書き留めてくれるけど7歳(小学校2年)まで字を教えてもらえないので、早く字を教えてもらいたくてたまらなかったとのこと。小学校3年生から「仕事」が始まり、実際に文房具店を経営したというのです。そのためには計算が素早くできなければできないし、領収書をきれいな字で書いて渡さなくてはいけないから計算や文字を書くことをみんな自主的に勉強したこと。先生は常に自分たちで考えるように仕向けてくれたので、転校生が来た直後、急に盗難が発生した時も、先生に促されて話し合っているうちに、転校してきて友だちがいないストレスではないかと気付いて、仲間にいれるようになったら自然に盗難がなくなったなど、今より先進的な試みをしている自主性を育む学校のようすにびっくりでした。子どものころチューインガムを禁止されたので、エルマーにはたっぷりチューインガムを持たせてあげたなど、子ども時代の思いがエルマーの物語に直結しているようすもよくわかった。22歳で書き始めた「エルマーのぼうけん」をその後夫となる人の母で画家に挿絵を描いてもらうが、家族で相談しながら完成していったいきさつも良かった。著者は90歳にちかいルースさんにインタビューしてこの本をまとめているが、その歳になっても元気でいたずらっぽい自由なルースさんのようすが魅力。一人の女性の生涯を紹介した物語としても読みでがある作品になっている。