児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

14歳からの戦争リアル

 

 読みやすく、多様でリアルな視点で戦争について語られたインタビューをまとめたもの。対象者はイラク戦争従軍経験の元アメリ海兵隊兵士、第2次世界大戦でトラック島で戦った俳人金子兜太氏、イラクで人質になりバッシングを受けた高遠菜穂子氏、紛争調停の実績ある伊勢崎賢治氏、ジューナリストで料理人としてイラクで民間派遣を経験した安田純平氏、兵役拒否のためフランスに亡命した韓国人イ・イェダ氏、元自衛官集団的自衛権に反対した泥憲和氏、戦時中に女優で満州引き上げを経験した赤木春恵氏。特に衝撃だったのは紛争屋伊勢崎氏、正義感では解決できない現実的な妥協方法や、抑止方法の落としどころをさぐる、という終わらせ方に納得。自衛隊の海外派遣についても、日本が軍事法廷がないため、兵士が現地で行った犯罪の裁き方が決まっていないとトラブルの元になり危険、と根本的な法制度(9条以外の憲法76条で禁じられている軍事法廷禁止)などの改革が必要、というのも納得でした。また、元自衛官自衛隊は国を守る、それは国は基本的人権や生命、財産を守れと書いてあるから当然。だが、他国に行くのは自衛隊の仕事ではない、なんで戦争に飛び込んで行く必要があるのか? と発言して集団的自衛権を否定しているが、これも論旨が明快でわかりやすかった。高遠氏は、さんざんバッシングを受けたが、あの事件の前も後も、一貫してボランティアとして人道支援をしている。こうしたことが報道されていないことに気づきドキリとした。安田純平さんは、この後長期で人質にされている。人質にされるところに行くな、ということはそういう地域の情報はいらない、そういう地域の人間は関係ないといっているのと同じ。それでいいのか? という雨宮氏の問題提起も胸に応えた。「戦争」がそれだけではなく、「貧困」と絡んでいること、その貧困者を活用して戦争ビジネスが行われ、ますます貧しい人たちにとって悲惨な状況が継続するという循環をきちんと見極めたい。