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時の石

 

時の石 (創作のとびら)

時の石 (創作のとびら)

  • 作者:那須 正幹
  • 出版社/メーカー: 文溪堂
  • 発売日: 1994/05/01
  • メディア: 単行本
 

日本史をたどるような短編連作で、それを白い石がつないでいる構成。「稲の来た道」で稲作と稲作をもたらした人々の渡来と出会った少年が白い石を拾う。「ヤマトの落日」でヒミコの時代で、後継ぎとされたトヨに白い石が渡される。「鋳盗の徒」で奈良時代に偶然のことから贋金づくりの仲間になったコジキの男の子が白い石を手にする。「牛飼童の宝物」は平安時代、偶然大宰府に向かう途中の村で菅原道真の乗る牛車の担当となった男の子に白い石が渡る。「むくり、コクリがくるぞ」では元寇にあった母娘。「猿楽の花」は室町の世阿弥に石が渡る。「天下への道」では秀吉が石を持つと、有名人の手にいくが、江戸時代が舞台の「お犬さまが通る」では、大工の見習い(背景に赤穂浪士エピソード)、「はなれの客」では大塩平八郎の乱を背景として彼を助けた家の女中の女の子、「子貸し屋」では明治時代、こじきに貸し出される子ども、「ヒロヒトの石」では太平洋戦時下のテニヤン島とヒロシマの原爆の犠牲になる男の子、そして最後「地球歴2531」が、白い石のなぞ解き、となっている。きちんとした感じではあるが、なんとなくどの時代も、時代のリアルさが薄いのと、白い石がどうやって持ち主から他の持ち主に移っていったのかが良く分からないのが気になった。ヒミコが服を脱ぎ、横たわり足を開いて太陽を受け入れる儀式のようなおもしろいシーンはあるけれど、奈良時代のコジキの男の子マタチが、コジキを気楽にやっているなどは、ホントか? と首をかしげたりとひっかかってしまった。歴史ものが好きな子には悪くないかもしれない。