私が勤め先で目にしている高校生の実態に答えをくれるような言葉が随所にあり、とても興味深く読みました。
著者の専門は、認知神経科学、発達心理学、ディスレクシア研究。現代のデジタル社会に生きる子どもたちには、バイリテラシー脳が必要といいます。つまり、情報から情報へ次々と渡って速く処理する能力と、紙媒体による深い読みの両方のこと。
本を読むのはいいよと子どもに伝えたい身としては、深い読みのスキルは「デジタル文化の弊害への重要な対抗手段」となり「デジタルのプラス効果も補完」するという論に勇気づけられる。ただ、そのスキルは10歳までに身につけないとならない。
2歳までの読み聞かせ、2歳から5歳までの物語で文字を読む脳を準備し、5歳から10歳までに深い読みが完成する。このような思考モードが備わらないと「自分のすでに知っている範囲の外には出ない」「現代の若者は自分が何を知らないか知ろうとしません」という指摘。まさにそう。でもあきらめたくはない。
イタロ・カルヴィーノやフランシスコ教皇の言葉の引用などにも力をもらえます。(は)