児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ヴォドニークの水の館

 

貧しくひもじい暮らしがつらくて家をとび出したむすめ。川へ身を投げようとしたところ、水辺の主ヴォドニークが現れ、水底にある館へ連れていかれます。ここで食べさせてもらうかわりに館の掃除をすると、ゴミが金の粒に変わりました。館の広間には、たくさんのつぼが並ぶ。ヴォドニークからは「けしてふたを開けるな」と言われますが、ある日、川でおぼれ死んだ弟の声をがしてふたを開けると、弟の魂がとび出してきました。わが家が恋しくなったむすめは館を逃げだすことを決意。ためておいた金の粒を持ち、つぼに閉じこめられた魂たちをすべて自由にすると、館をとび出しました!
ヴォドニークとはチェコで言い伝えられる水の魔物。降矢ななさんは「日本の河童みたいなもののけ」と。魂たちが鳥になって光り羽ばたいていく場面は、『三本の金の髪の毛』(のら書店)所収の「水底のニッカーマン」の一場面として口絵に描かれたもので、とても深い印象を残します。高学年向きと思いますが、文庫では3年生の親子がじっと聞いてくれました。 (P)