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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

岩波少年文庫のあゆみ1950-2020

 

岩波少年文庫70年史だが、この本で初めて知ったのは前史「少国民のために」というシリーズが戦時中に発行されていたということだった。自然科学振興(戦争遂行のため)『トンネルを掘る話』『渡り鳥』『雷の話』のような本を出したとのこと。ちょっとどういう内容のものであったのか見てみたい。いわゆる70年史としての思い出だけでなく、“挿絵の魅力”“翻訳の妙味”などの章をたてて、焦点を絞った解説をしている。刊行後70年となると、発行当時読んだ子どもたちさえ高齢となり、発刊にかかわった人々は故人になっている。他の資料からの採録もあるが、こうしてまとまって読むことで全体の雰囲気が見えてくる。少年文庫はコンスタントに出たわけではないが、その背景などもわかって面白かった。最初の第一期に出た本が、今でも出版されているというが、息長く読まれて、子どもたちを楽しませて欲しい。