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宝島(福音館古典童話シリーズ)

 

宝島 (福音館古典童話シリーズ)
 

老海賊の登場から、宿屋の少年ジムが宝島の地図を手に入れ、宝探しの航海に加わる展開にぐいぐい引きこまれる。船内の裏切りをりんご樽の中で聞いてから、宝島への上陸隊ボートへの忍びこみ、島流し暮らしの元海賊との出会い、謀反人に乗っ取られた船を大男2人相手に取り返し、さらに島の丸太小屋で敵陣のシルバー船長はじめ6人の海賊相手に堂々と渡り合い、ここまで重ねてきた自分の手柄を並べ立てるところは胸がすく。ジムは”もってる”少年なのだ!

子どもの頃読んでおもしろかったのはそこだろう。というのも、私が初めて読んだのは阿部知二訳の岩波少年文庫版で小学4年か5年の時。数十年ぶりに読み直したら結構読みづらい文章でよく読んだなあと思う。でも「おもしろかった!」という気持ちは覚えているので、さすが原作の力。今回この福音館版を読んだらテンポがよくてずっと読みやすい。挿絵も同じ寺島龍一だが、少年文庫版にはない場面、特に冒頭から物語世界に入りやすいのと、見開きいっぱい帆船が居並ぶ港の風景や謀反人たちとの闘いの場面は声や音が聞こえるような迫力です。当時の自分に教えてあげたかったです。 (P)