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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

天国を出ていくー本の小べや2

 

自選短編集「本の小べや」(邦題『ムギと王さま』)に収める27編のうち13編。世の中の片隅で生きている小さな子どもへあたたかいまなざしをおくるものが多い。

みなし子が家族を得る幸せをそれぞれに描いたのは、「サン・フェアリー・アン」「しんせつな地主さん」「『がみがみシアール』と少年」。「がみがみシアール」は、クリスマスの前日に起こった不思議な出来事で絆をむすんだ老人と子どもの羊飼いの物語。 「十円ぶん」は、十円玉を拾った少年が大きな駅で汽車やお店をめいっぱい楽しみ、最後は望みの板チョコを手に入れる。

ほかに、社会風刺的な「むかしむかし」「ティム一家」に考えさせられ、インコの選ぶおみくじが運勢を示す「ボタンインコ」にはたった6ページで心を揺さぶられる。最後の「パニュキス」は、30歳近くまで空想の世界をもっていたファージョン自身を投影したかのよう。 (は)