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花仙人

 

昔、中国の長楽村という小さな村に、秋先という名の老人が住んでいました。秋先は、花を育てるのがたいへん上手で、庭には1年じゅう花が咲き誇っていました。

ある日のこと、張委というならず者が手下を連れて乱暴に押し入り、庭の花を次々にへし折ってゆきました。秋先が悲しみに暮れていると、どこからともなく美しいむすめが現れ、落ちた花々を元の枝に戻してくれました。

ところが次の日、再びやってきた張委は、一層美しくなった庭を見て、秋先は妖術使いだと役所へ訴え、秋先は牢屋へ入れられてしまいます。いい気味だと張委たちは、秋先の庭で酒を飲んで大さわぎ。すると、とつぜん冷たい大風がふき出し、舞い上がった花びらが姿を変えた美しい花の乙女たちの吹きかける冷たい息で、張委は死んでしまいました。

村人たちの訴えで秋先の罪は晴れ、秋先はそれからも長く花を世話し続けましたが、あるとき舞い降りてきた五色の雲にのって天に昇り、花仙人となりました。秋先が去ったのちもこの村には美しく珍しい花が咲き続け、やがて百花村と呼ばれるようになったのです。
松岡享子さんが、子どもの頃繰り返し読み、後に初めて中国を訪れた際に、「ああ、知ってる!」となつかしく感じるほど、その風景、空気にあふれた中国の昔話。 (は)