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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ロシアの昔話

 

「おおきなかぶ」や「マーシャとくま」など絵本でもよく知られるごく単純なものから、不思議で壮大な冒険ものまで33話。長短、緩急とりまぜた配し方が絶妙です。

なかでもイチオシなのは、「牛の子イワン」。金色のひれをつけたすずきの料理を食べ、全く同時に息子を授かったお妃と料理女に、そして雌牛。3人の息子たちは、イワンという名も同じなら顔もそっくり。ただ、力くらべをしてみると、1番の力持ちは牛の子イワンだった。そこで、牛の子イワンが一番の兄きということに決まり、3人は旅に出る。牛の子イワンの豪傑ぶりがとにかく痛快。六つ頭、九つ頭、十二頭の怪物との戦い、十二人の力持ちが鉄の熊手で持ち上げるほど長いまゆ毛とまつげをした悪魔との対決。また、旅の途中で仲間になる5人の年寄りにはそれぞれ得意なことがあり、「パンをくう」「ワインとビールをのむ」「ふろにゆっくりはいる」「星うらない」「すずきになって泳げる」ことが、適材適所のいいはたらきをする。最後は、牛の子イワンと金の巻き毛の王女が結婚して大団円。

なまけ者が寝そべるペチカや、歯なしで骨の一本足のババヤガーが、ロシアらしさ。また、主人公を助ける存在がくり返し口にする「困ったことは、もっとさきにおこるでしょうよ」、「ひと晩寝れば、よい知恵もうかぶ」といった言葉は、昔話が伝える人生の知恵ですね。 (は)