著者は、ひとり親、DV被害者、性的マイノリティの住生活問題、シェアハウスに関する研究が専門。「住まいは人権」という意味を、日本の住宅政策の歴史をたどりながら、社会的弱者の目線でかみくだいて論じる。
入学、就職、携帯電話の契約、ポイントカードをつくるときなど、当たり前のように要求される住所。ネットカフェやファミレスなどは、その代わりにならないし、またプライバシーや、適切な広さや価格、学校・医療施設・勤務先へのアクセスといった観点から、避難所や都市部の住宅にも問題が多い、との説明はわかりやすい。
ホームレスの人たちに、施設入所ではなく住宅を提供したら、路上に戻ることがなくなったとか。また、高齢者など行き場のない人の社会的入院の問題については、イタリアが精神病院を廃止し地域医療の体制をつくって成功した事例など。このあたりは、あとがきにもあるように、行政や不動産業界にいるおとなに届けたいところ。
中学生には、各章導入にある生徒たちの会話が身近に考えるきっかけになりそう。
国の政策への提言が多い本文の理解は、高校生から。 (は)