児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

あした、弁当を作る。

 

日下部龍樹はいつものように中学に行くために家を出た。なのに、いつものように「行ってらっしゃい」と背中に触れた母親の指にゾクっとする。自分の中の違和感を冷静に見つめていく龍樹と、周りの友人たちからみが面白い。専業主婦で家にいて、色とりどりのおかずを入れたお弁当を用意してくれる母、その母のお弁当が急にいやになり、自分で作ってみたいと想う。冷凍食品を詰めただけでもお弁当になると知り買って帰るが、その龍樹の行動は母親を狼狽させ、父親は勉強だけしていればいいのだと怒る。だが、淡々と龍樹は続ける。母親が部屋に入ってくるのがイヤになり洗濯もはじめる。わりと良い子で、自分を客観的に見ていくこの龍樹のキャラは、一歩間違えると説明的な人間になりそうだけど、思春期の自立の解説本や家の中の男女差別に行きそうで行かないところにとどまっている感じが面白かった。実際に中学生が読んだら、どう感じるのかな?