今年の7月から新五千円札の顔となった津田梅子。津田塾大学の学長である著者が、豊富な図版、資料とともに、その生涯と功績を解説します。
梅子がわずか6歳で日本初女子留学生の1人となったのは、日本の近代化のために「賢母」としての教育、つまり「有徳な市民」(男子)を育てる母親の役割が重視されたからで、政府は旅費、学費、生活費をすべて負担し、奨学金も出したとか!しかし、11年後に帰国してみると、女性の働くポストは用意されておらず!政府の思惑どおりアメリカの家庭教育をしっかり身につけた梅子は、日本語で家族とコミュニケションがとれず、ホスト夫妻との手紙のやりとりが心の支えとなった皮肉。
それでも、不屈の精神をもち、同時留学の大山捨松と瓜生繁子との絆、ヘレン・ケラーやナイチンゲールとの出会いもあって、「all-round women」の教育をかなえた人生は、比類なき存在だと思います。
ただ、論文調で、おもしろい読み物かというと・・・。親兄弟や、留学に関わった政府官僚、留学先のホスト夫妻など、周辺の人びとについての記述が多く、もちろん梅子に関わる人がいてこそ歩んだ道ではありますが、梅子がもう少しよく見えるような文章だと興味が持てると思いました。 (は)