児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

エルフたちの午後

 

エルフたちの午後 (評論社の児童図書館・文学の部屋)

エルフたちの午後 (評論社の児童図書館・文学の部屋)

  • 作者: ジャネットテーラー・ライル,Janet Taylor Lisle,宮下嶺夫
  • 出版社/メーカー: 評論社
  • 発売日: 1994/05
  • メディア: 単行本
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 年上で、貧し気で、つっぱった印象のある隣の家の少女サラケート。彼女の家には、エルフたちがつくったという小さいが美しい庭があった。まじめでおっとりした女の子ヒラリーは、エルフの庭に魅せられ、日に日にサラケートに近づいていくことになった。姿を見せないサラケートの母親。からっぽだといううわさの家の中、孤独だが誇り高いサラケートと、良心的な両親に大切に育てられた純なサラケートの心のふれあいと、エルフの庭の謎が余韻を残す。

砂漠の物語

 

 

砂漠の物語

砂漠の物語

 

 砂漠の存在感がリアルな4作品が収録。滅びた王国を探す学者と、孫を奪ったオオカミを求めるオオカミを追う老人の「砂漠のオオカミ」は、オオカミに育てられて狼と化した孫を取り戻せない。「砂漠のまつり」は、雨を求めた神事でもある芸能が、文化として扱われる現代の中での物語。伝統の弾圧を受けた歴史がいたわしい。そして、頑固に自分の手で作物を育てようとする老人の姿も見呂億。「砂漠の弔い」は優秀な砂漠の緑地研究家でありながら、権力闘争ではめられ、砂漠に生きがいを求めた男と、ラマ僧であった人生を奪われながらも、やはりラマ僧であり続ける僧との間の友情と二人が育てた白いオオカミ犬、そして夫の死後にやってきた研究者の妻の物語。「砂漠のキツネ」は砂漠に生きる中で、砂漠の生態系に気付き、キツネを含めた生き物を大切に守ろうとした男と、平気で狩りを楽しもうとした外来者の物語。いずれも、砂漠の魅力、厳しさと、そこに生まれる砂漠に適応した命が魅力的に描かれる。必ずしもハッピーエンドではないのに、砂漠への畏敬の念が伝わり心が動かされる。

がんばれクリーキー

 

がんばれクリーキー (フォア文庫 (B076))

がんばれクリーキー (フォア文庫 (B076))

 

おてんばなかもの子クリーキーは、きつねに襲われて片羽を怪我してしまいます。飛べなくなったクリーキーは、寒い冬が来るというのに、家族と一緒に暖かい南に渡ることができません。おまけにきつねは、今度こそクリーキーを仕留めようと狙っています。うさぎやカラス、森の鳥たちに助けられながら、キツネをのがれ、山の湖目指して旅立つクリーキー。自然をリアルに描いては射ないが、クリーキーを助ける周りの動物たちとの友情が素直に楽しい。 

しあわせの子犬たち

 

しあわせの子犬たち (文研ブックランド)

しあわせの子犬たち (文研ブックランド)

 

 おばあちゃんの農場で、今年は特別のことが起こるという。コリー犬のエルシーが赤ちゃんをうむのだ。おばあちゃんと一緒に準備をし、ドキドキしながら待つが、その描写がとてもリアル。へその緒を切るかもといわれて気持ち悪いと思うところなど、実際に子どもが感じそう! 無事に生まれた6匹の子犬の面倒を見、その飼い主を探すことになる。本当に子犬を大切にしてくれる人を探すところ、一匹一匹が本当にふさわしい人に出会って幸せになるようすがよい。

だんまりうさぎときいろいかさ

 

だんまりうさぎときいろいかさ (安房直子名作童話)

だんまりうさぎときいろいかさ (安房直子名作童話)

 

 文に対して挿絵が弱い。きちんとしているが融通のきかないだんまりうさぎと、元気で思い付きで行動するおしゃべりうさぎの物語。雨が続くのに、傘が壊れて外に行けないだんまりうさぎは、古いレインコートから傘を作ろうと思いつく。きちんと手順を踏んでつくるのに、何日もかかり、出来上がった時には雨が止んでしまった。それでも日傘として役にたった結末がうれしい。臨機応変に素早くが求められる中で、ゆっくりだけどきちんとやれるだんまりうさぎさん魅力的!

地底都市コロニアル6フォール 自由への落下 下

 

フォール 自由への落下(下) (地底都市コロニア 6)

フォール 自由への落下(下) (地底都市コロニア 6)

  • 作者: ロデリックゴードン,ブライアンウィリアムズ,Roderick Gordon,Brian Williams,橋本恵
  • 出版社/メーカー: 学研プラス
  • 発売日: 2017/03/07
  • メディア: 単行本
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 バロウズ博士と2人きりになったウィルは、地下基地を見つける。どうやら世界大戦中に作られた基地と思われ、そこにあった物資で地上に戻る。地上では無事にドレイクや養母と再会できた。だが、チェスターたちを救いウィルスを阻止するため、再度地下にもぐる。地下でチェスターたちと合流を果たした一行は、バロウズ博士の思惑もあり、さらに地下を目指す。そして地下に謎の文明があることをつきとめた。そしてレベッカたちの痕跡も。一方地上部隊は作戦が失敗し、バロウズ夫人はつかまりダークライトの尋問にさらされ、廃人と化すが同情したコロニア人に引き取られる。そして、地下世界ではウィルたちは第二次世界大戦中のドイツの爆撃機が空を舞うのを見て愕然とするのだった。
とまぁ、ますますエキサイティングしながら続く、で終了。だらけたバロウズ夫人が、急に母性にめざめて強靭な戦士の心を持ってしまったり、あれだけ抜け目ないスティックスが地上との大規模通路に気づかなかったり、大規模通路があれば、それなりの応援要請可能では?だったりとつっこみどころ満載だが、ともかく読んでしまう。漫画化連載したら、こうしたアラがめだたなくなるから人気連載になりそう。

地底都市コロニアル5フォール 自由への落下上

 

フォール 自由への落下(上) (地底都市コロニア 5)

フォール 自由への落下(上) (地底都市コロニア 5)

  • 作者: ロデリックゴードン,ブライアンウィリアムズ,Roderick Gordon,Brian Williams,橋本恵
  • 出版社/メーカー: 学研プラス
  • 発売日: 2017/03/07
  • メディア: 単行本
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 追放された人間を助けているというドレイクと、ドレイクに救われた過去を持つ美少女エリオット。ウィルはエリオットに惹かれるが、自分は足手まといの存在でしかないとクヨクヨする。一方、ウィルの養父バロウズ博士はディープスに適応している糞石人に面倒をみてもらっていたが、地下に新たな動きが起こり、糞石人は移動。一人で地下世界を彷徨ううちに不思議な古代遺跡を見つけるものの、巨大な甲殻類に追われ、謎の大穴に転落する。ウィルたち一行は、襲撃を受ける、その中で、レベッカたちが地上を攻撃するウィルスの開発施設に遭遇、その恐ろしさを目の当たりにする。ドレイク離れた後に、サラと遭遇するが、刺族と思い込み狙撃、サラは重傷を受ける、誤解は解けたものの別れ別れに。一行は追い詰められ、やはり大穴に到達。カルが狙撃され、互いをつないでいた綱にひかれて一行は転落。それをみた瀕死のサラは、ウィルスを持ったレベッカを道連れに、大穴へと飛び込む!
滅びたはずの太古の生き物、穏やかな糞石人、謎の古代遺跡、そして生き延びるための暗視ゴーグルなど、映画化しても面白そう。アルアルの俗っぽい展開ながらもわくわくと読み進んでしまう。しかし、やっぱこういうところに出てくる女の子は美少女戦士なのよね。