児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

魔女のたまご

 

魔女のたまご (あかねせかいの本 (1))

魔女のたまご (あかねせかいの本 (1))

 

 いじわるでこわい魔女のアガサは、たった一人で昔ワシが作った巣の中に暮らしています。ところが、ある日、他の鳥の巣に卵を産み付けるカッコーがそこに卵を産み付けていきました。アガサは怒りまくりますが、卵の母鳥が見つからない中で、他の鳥たちがアガサが育てるのは無理だといわれ、意地になって卵を温めてヒナを孵します。ヒナを懸命に育て、マジョドリと名付け、二人はすっかり仲良くなりますが、マジョドリは渡りの季節が来て去ってしまいます。すっかり落ち込むアガサ、マジョドリは帰ってこないという言付けをよこしますが、結局アガサに会いに帰ってきてハッピーエンドとなる物語。ありがちなおはなしだけど、ヒナがアガサに、自分が卵からかえるときの話を何度もねだるところなどは、ほのぼのとしていていい感じです。

ようせいのゆりかご

 

ようせいのゆりかご (せかいのどうわシリーズ)

ようせいのゆりかご (せかいのどうわシリーズ)

 

 読んであげるなら5歳くらいから、自分で読むなら小学校2~3年から。表題作は、くもが妖精の女王さまのあかちゃんのゆりかごをつくっていたのに、サリーの遊んでいたマリがこわしてしまったおはなし。サリーは、かわりにクルミの殻を使ってクモと一緒にゆりかごを作るおはなし。他の物語も指ぬき隠しの遊びをしていたら、ネズミがこっそり持って行ってしまうが、裁縫箱の仲間が助け出す「銀のゆぶぬき」、こねこが小人を捕まえてしまったのを助けてあげる「こねこのつかまえたもの」など、妖精や小さな者たちのおはなし。夜に歩き回って、みんなを助けてあげる小人「夜のみはりばん」など、一度読むと、今夜自分のところにも来てくれそうな気持になる。不思議が、ごく自然に子どもの心に届く物語。

闇にひそむ影 ルイスと魔法使い協会

 

闇にひそむ影 (ルイスと魔法使い協会)

闇にひそむ影 (ルイスと魔法使い協会)

 

 新しくローズ・リタという友人ができたルイスだが、あいかわらず弱虫。リタがいじめられていても、ただ逃げ出すだけ。魔法のコインを見つけて力を得るが、その霊に取りつかれて殺されかけるところをおじたちに救われる。いくじなしで、友を見捨て、自分が勝手にした悪事を告白もできない主人公は、ただのわがままでいくじなしの男の子。救われる方法も安易。こういう主人公を子どもは、共感を持って読めるのだろうか?

ゴーストの騎士

 

ゴーストの騎士

ゴーストの騎士

  • 作者: コルネーリア・フンケ,浅見昇吾
  • 出版社/メーカー: WAVE出版
  • 発売日: 2016/06/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 大好きだった母さんと妹に取り入った顎鬚! ジョンは顎鬚が大嫌いだった。なんとか追い出そうと画策するが、気付いたら11歳で寄宿学校に追い出されるはめにおちいった。でも母さんだって、そのソールズベリーに、僕を先祖のせいで狙っているゴーストがいるなんて知らなかったろう! 幽霊に対抗するには幽霊しかないと教えてくれたのは、最高にかわいいけど変わり者のエラ。心から助けを求めれば助けてくれるという騎士ロンジェスピーの幽霊に助けをもとめ、騎士は期待に応えてくれた。だが、勝利したと思ったのもつかの間、ゴーストの逆襲が始まる。エラの祖母ゼルダとともに、助けに駆けつけてくれたのが、まさかの顎鬚。エラの叔父だったのだ。寄宿舎の友人や過去の因縁。ロンジェスピーと妻の愛などフンケらしくうまくまとめてあり気楽に楽しく読める。

おさげの騎士

 

おさげの騎士(ナイト) (山中恒児童よみもの選集 (15))
 

 美人で運動神経抜群で頭もいい木原ユキエの前にあらわれた転校生北地信一郎。みかけは不細工でサエないやつで、やることすべてユキエの気に障るのに、なぜか気になる! こういうベタなエンタメでは、山中恒はちょっと古めかしくなったものの、気楽に楽しくよめる。

サイモンvs人類平等化計画

 

サイモンvs人類平等化計画 (STAMP BOOKS)

サイモンvs人類平等化計画 (STAMP BOOKS)

 

 主人公サイモンはゲイだけど、実際のところゲイを問題にする必要がないくらい普通の感性の男の子。そんな子がゲイであることを悩まなきゃならないことが問題か! 17歳のサイモンは、学校裏掲示板で偶然見つけたブルーにピンとくるものがあって、匿名でメールのやり取りをしている。ブルーにならなんでも打ち明けられるし、ブルーも心を打ち明けてくれる。ちなみに、サイモンの家族は古き良きアメリカンファミリーで、夜にはみんなでそろってテレビを見ながらワイワイするのが恒例。家に帰ると、学校でのできごとを親に話すのが日課だ。外でハメを外してお酒を飲んでしまった罰は、1週間パソコン禁止で携帯も取り上げ! それにまたサイモンがおとなしく従っている。日本の子だったら、1週間携帯取り上げとか言ったら12歳でも「無理」というんじゃないだろうか? アメリカの児童文学みていると、こうしたことが意外とある。原書も2015で現代が舞台なので、信じられない気もするが、他方でSEXはしていて当然と認識している。サイモンは、ゲイだとマーティンに知られたことをネタにクラスのアイドルのアニーとの仲を取り持つように強制されて悩むのだが、学園祭の演劇発表を中心として、ブルーの正体を探しているうちに、実は友人たちのプライベートを知らないことに気づいたり、親をうっとおしく感じ始めてる自分に気づく。最後は無事にブルーの正体もわかり相思相愛のハッピーエンドです。

ゆびぬき小路の秘密

 

ゆびぬき小路の秘密 (福音館創作童話シリーズ)

ゆびぬき小路の秘密 (福音館創作童話シリーズ)

 

イギリスを舞台とし、イギリスの男の子を主人公とした、日本人作家のタイムファンタジー。バートラムは、引っ越し先の街で買ってもらった中古のコートについている5個のボタンに心惹かれる。そのボタンは、一角獣の角でできているという言い伝えがあり、バートラムを過去の世界へ連れていってくれるのだった・・・。6度目の訪問で戻れなくなる緊迫感とボタンさがしがきれいにまとまっているが、友人になりかけるマークとのつながりなど弱い感じが残念。