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ロバになったトム

 

ロバになったトム

ロバになったトム

 

 決して新しい本ではなく、あやうく書庫に入っていたものを救出。

概要

人はいいが、怠け者のトムはある日妖精から贈り物をされる。「日の出前に始めた仕事は一日続く」「将来結婚する相手が言った通りのものになる」というありがたいんだか、ありがたくないんだかわからないおまじない。

真に受けて運試しに出たトムだが、羊飼いの少女ジェニファーが、「あんたはロバね」と言ったとたんに、本当にロバになる。ロバになったトムはジェニファーと連れだって旅をつづけることに。ジェニファーはまことに賢く、しっかりしたお嬢さんで、トムに与えられた妖精の贈り物の意味もよく分かっている。同時に、まじめに働くことの大切さも。農場の手伝いから始まって、一歩一歩手に職をつけ、自立して稼ぐ道をつけていく。ロバの方も、そんな彼女を陰ながら手伝いつつ、よく見聞きし、考える事を学んでいく。

最後には、王様にお金を貸すほどの大金持ちに出世し、魔法もとけ、ジェニファーとトムは結婚し、めでたしめでたしというわけ。

感想

1500年代頃のイギリスを舞台にした歴史物。昔話をベースにしたちょっとしたファンタジーの味付けがあるが、どっちかというと、その魔法に頼らずに、自活していこうとする女の子の奮闘出世物語だ。主人公はジェニファーの方ですね。時代のリアリティーはちゃんと感じることができるし、明日を今日よりよくしよう、という健全な前向きさが嬉しい。この辺が、先日の「ロバートは歴史の天使」には欠けていたような気がするなあ。