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虫はごちそう!

 

虫はごちそう! (自然と生きる)

虫はごちそう! (自然と生きる)

 

 日本と世界の昆虫食をレポートした本。

日本のいなご、蜂の子などに始まり、ラオスのコオロギ、カラハリ砂漠のイモムシなど、筆者が地理学者として実際にフィールドワークしたエリアについて、詳しく説明されている。

イナゴの料理法なんかも解説されていて、小ネタも十分。写真はみな白黒で本当はもう少しビジュアルになっても良かったと思うけれど、イラストにだいぶ助けられている。

マーブルチョコのべとつき防止には昆虫由来の成分が使われている、とか、カミキリムシの幼虫が実はうまい、とか、クロスズメバチを愛好して養殖している人たちが日本にもいて村おこしに一役かっている、とか、実に興味ぶかい話しが続々出てきて飽きさせない。

あるものを好んだり、好まなかったり、食べたり、食べなかったりそうした差異と、それをつくっているある種のつながりを文化と呼ぶ。お互いの差異をどのように受け入れて、分かち合っていくか、昆虫食というのは、一見埋めがたい差異のように思えるだけに、そのとっかかりに、ちょうどいいのかもしれない。

巻末には、昆虫食をめぐる学習ガイドのようなページもあり、博物館や、基本的な文献解説などもあってありがたい。

 

私自身、昨秋、生まれて初めて蜂の子を素揚げにして食べた。つくだにだと、分からなくなってしまう微妙な味は、確かに他にはあまりないのかも。とてもおいしかったのを思い出した。