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月の精

 

月の精 (翼をひろげて (3))

月の精 (翼をひろげて (3))

 

 ジャスティ・シェーン著 中村圭子訳 文溪堂 1997 4-89423-201-4

シンディは、自分でも不思議だった。去年までの自分は、成績もよく、明るくてきれいな女の子だったのに、なにが、変わってしまったのだろう。本当ならもっと勉強したかったと愚痴をこぼすママにイライラする。あこがれていたヘルゲに誘われて、ひっそりと会うようになったのもつかの間、彼はなにも言わずに転校してしまった。胸がふくらみ、体のあちらこちらに肉がついてきて自分の体が変わっていくのに耐えられず、シンディは拒食に走り始める。運動をして、極力食べない、そうしている時だけが、自分で自分をコントロールしている満足を得られる。「ちょっとやせているだけでふつう」だと、目を背けていた両親も、ついに彼女を精神科に連れて行くことに決意する。家族全員の面接の中、シンディは、不満を持つ母が自分に甘えていたことに気付く。家族が互いの立場を見直しながら再生しようとする中、ヘルゲが帰ってくる・・・不安の中で、一歩一歩進む女の子の思いや、母親を「私はママのママじゃない」と拒絶するところなどは説得力がある。いかにも北欧(?)的な作品。