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ヴォイス 西のはての年代記Ⅱ

 

ヴォイス (西のはての年代記 2)

ヴォイス (西のはての年代記 2)

 

 大国オルドに蹂躙されたアンサル。たくさんの神々がおわす交易で栄えた文化都市のおもかげはもうない。砂漠の一神教で文字を持たないオルドは、本を燃やし、字を学ぶことを禁じた。征服軍のレイプの結果生まれたメマーは、血族カルヴァ家の道の長家で、17歳になっていた。かつて母から教えられたとおりに壁に向かい手を動かすと、隠された部屋が開く。そここそが秘密の図書館で、長に見つかり、文字を学ぶことになる。その部屋にある血を流しうめく本。それこそがアンサルの予言の書だった。吟遊詩人オレックと妻グライが、オルドの将軍イオラスの招きで来訪。中立の二人を通じてメマーは憎むべきオルド人もまた人であることを理解していく。イオラスの妾とされたティリオは、少しずつイオラスを変えていた(王妃エステルを連想する)。オレックの来訪を起爆剤にしようと考えた過激派の反乱と失敗。だが、それを契機としてお告げの泉の水は噴出し、ティリオの仲立ちで妥協の平和と解放がもたらされる。そしてメマーは自分が予言の“声”となったことを知る。報復しあう今の時代を映す中でのル・グインの抑えたメッセージを自然に感じる。本は全て予言の書ネ!