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パワー 西のはての年代記Ⅲ

 

パワー (西のはての年代記 3)

パワー (西のはての年代記 3)

 

 ガヴィアと姉のサロは、幼いころ攫われ、奴隷として売られた。ガヴには、まだ起こっていない事を"思い出す゛力があったが、姉は、決してその力を他人には言わないことを約束させていた。情け深い主人の下学問を学び、美しい姉もまた、主人の長男ヤヴンと相愛で彼のギフト・ガールとして幸せだった。だが、残酷な次男のトームと、その影のような奴隷の異母弟ホビーはガヴィアを憎む。サロがトームに暴行死されれれたのを機に、彼は屋敷を逃亡。「森の心臓」と呼ばれる逃亡奴隷達の王国に行き着いた。陽気で大らかなリーダーのバーナ。だが、その"自由″は女性を隷属させる自由だった。バーナの愛人に手を出した疑いに追われてカヴは逃亡。生まれ故郷をめざし、叔母とめぐり合うが、育った環境の違いは、カヴを故郷にも落ち着かせてはくれなかった。少年の頃心惹かれた詩人カスプロに合い、大学で学ぶことを求め旅立ったカヴは、森の心臓の崩壊を知る。兵士に滅ぼされた地から、かつてかわいがっていた女の子メルを救い共に進む彼の背後から、憎しみにかられたホビーの手がせまる。゛思い出し゛に導かれ、ホビーをふりきりカスプロと出逢うカヴ。少年の成長物語として、やや図式的な型も感じるが充分楽しませてくれる。3部作はこれで終了とのことだが、もっとよみたい!80歳間近で創作を続けるル=グィンに期待!