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エベレスト・ファイル シェルパたちの山

 

エベレスト・ファイル シェルパたちの山 (児童単行本)

エベレスト・ファイル シェルパたちの山 (児童単行本)

 

 ネパールの僻地に薬を届けるボランティアに志願した“ぼく”は、そこで少女シュリーヤと知り合う。シュリーヤに頼まれ、彼女の幼馴染であり、どうやらそれ以上の存在であるカミという少年の行方について“ぼく”は調査を引き受ける。彼は、訓練を受け、おじとともに初めてのエベレスト登山のシェルパの仕事に出かけて以降消息が不明なのだ。生きているらしいのだが、同行した誰もが、はっきり答えてくれない。カミがいるという僻地にたどり着くと、彼は半身不随の身になり、それでも明るく生きていた。カミが参加したのはブレナンの登山隊。アメリカ大統領の地位さえ狙うブレナンは、まちがいなくたくましいスポーツマンだが、敵も多い。ブレナンのゴシップ写真を狙い、シェルパに小金を握らせる大衆紙のカメラマン。一方では、彼の見栄えのいい写真をとるために、恣意的な場面の演出もある。陰の存在であるシェルパは、隊員が休んでいる間も荷運びをし、彼らが帰ったあとに残され、凍傷となって去るものもいた。頂上に近づくと、置き去りにされた死者の姿が増える。予定外のトラブルの中、カラはブレナンと共に頂上をめざすことになるが、天候は悪化。限界に達したブレナンは「登頂成功」捏造にカミを巻き込もうとする。ドキドキする登山のドラマに思わず読み進んでしまう。シェルパこそエベレストの主かもしれませんね。