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スピニー通りの秘密の絵

 

スピニー通りの秘密の絵

スピニー通りの秘密の絵

 

 「ゴールデンフィンチ」の児童書版という感じの本。セオドラは13歳。家に経済的な余裕はなく、庭で畑を作り、ニワトリを飼う自給自足まがいの生活をしている。拾ったもののリサイクルの達人でもある。母親は、数学の論文と紅茶の自分だけの世界で生きていて、まわりに何が起きているかもきづいていない。頼りは祖父のジャック。美術館の警備員をしていて、画家でもあった。だが、事故で急死してしまう。「卵の下に 宝・・」と謎のことばを残して。セオは、毎日卵を置いている暖炉の下をさがすが、何も見つからない。だが、偶然のことからそこにおいてある絵の裏に、別の絵が描かれていたことを発見する。祖父はなぜ、この絵を? そしてこの絵は何の絵? 偶然出会った映画俳優の娘ボーディーとチームを組む。親の都合で転々としているボーディーも友人がいない。そして大人に囲まれて育っているのでちょっと変わっている。ジャックとともに名画を見て育ったセオは、発見した聖母子像はラファエロの絵ではないかと直感するが、それでは、その絵はどこからきたのか? 二人を助けてくれる図書館員のゴールディ、博物館の職員で、セオが何かを持っていることに感づくランドン。収入がなくなり気をもむセオの横で、高価な紅茶を平気で買う母、それを母に売りつけるきどった隣家のマダム・デュモン。実は、祖父が、第二次世界大戦中にナチスの美術品の奪還を担う仕事をしていたという意外な事実から、真相にたどり着く。そして、その絵画の意外な真の持ち主! 伏線からしてよくできた物語。しいて言えば、ジャックは警備員の仕事をしていたし、軍人恩給もあったのに、収入をそんなにきりつめていたのはなぜ? そして、最後の最後に、やっと経済問題が解決されるけど、ここで隠し場所がみつかるか~かな。探索の過程で、様々な友人や手を差し伸べてくれる人と出会うセオの成長物語として満足。