第二次世界大戦末期、南イタリアで農民として暮らしていたジョゼッペの田舎にも戦争がやってきた。爆撃で両親が死に、赤ん坊の弟ブルーノとジョゼッペだけが生き残った。母さんの遺言で、ブルーノを近所の赤ん坊がいる家にあずけ、ナポリにいる叔母の一家を頼って旅出す決心をする。居合わせたアメリカ兵たちが、ジョゼッペの両親を葬って励ましてくれた。途中、賢いロバと猿のアダムを連れたウリッセという若者と出会い、助けられてナポリに到着する。おばさんたち一家は暖かく迎えてくれた。一家には、空襲で母親を亡くし、記憶を失ったマリアという女の子も引きとられていた。ウリッセとジョゼッペはオレンジ売りを、オレンジの入荷がない日はマリアも含めたミニサーカスで稼ぐが、警察がマリアを孤児院に連れ去った。ジョセッペとウリッセは、マリアの脱走に手を貸し、3人は叔母の夫の弟がいる漁村に逃げ込んだ。だが、この村で暮らしのために密輸を行い、それが摘発されてまたしても3人は逃げだすことになった。記憶を取り戻しかけたマリアが、父親がローマにいることを思いだしたことから一行はローマに向かう。だが、乱暴な敗残兵のためにウリッセは命を落とし、さらにあくどい大人に猿のアダムも奪われてしまった。子どもが自由に暮らせる“子どもの町”があるといううわさを聞いたジョゼッペとマリアは、そこをめざすが、やっと着いたそこはどこかうさんっくさげだった! 『赤毛のゾラ』の作者による作品で、ジョゼッペに危機が訪れるたびに、最初に友だちになったアメリカ兵と偶然出会って助けてもらえるという展開はちょっと都合よすぎだが、まじめなウリッセ。ちょっと目立ちたがり屋でおなかを空かせているときは、ちょっとした盗みなら許されると考えるにくめないマリア。そんなマリアをなんとか守ろうとがんばるジョゼッペ、さらに戦争の混乱の中でかっぱらいをやりながら生き延びる子どもたち集団が生き生きと描かれている。作者は、こういう逆境の中で助け合う子どもを描くのが得意。子どもたちへの大きな希望を感じる。