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長くつ下のピッピ ニューエディション

 

長くつ下のピッピ

長くつ下のピッピ

 

リンドグレーン生誕100年の年に出された記念版で、イギリスの絵本作家ローレン・チャイルドによるコラージュ技法の挿絵が現代風でおしゃれ。菱木晃子さんの新訳もテンポがよく楽しい。大塚雄三訳、桜井誠絵(岩波書店、1964年)より挿絵の数が少ないため、これぞピッピのすごさという場面 ー例えば、牛や警察官を軽々と持ち上げてしまうなどーには若干物足りなさを感じる一方、サーカスの章で綱渡りの綱を文字で表現するなど文章を挿絵の一部に取り込んでしまう方法は、挿絵も1つの作品として楽しめておもしろい。
また、文章が横書きであることや、大塚訳で2文のところを1文にまとめたり逆に1文を短く区切ってテンポ良くするなどの工夫が、現代の子どもにも読みやすい。そもそもの文章のテンポ感やユーモアはリンドグレーンの賜物で、大塚訳も菱木訳もそれほど差はないので、この本をきっかけに現代の子どもにも続編に手を伸ばしてもらいたい。