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性の多様性ってなんだろう?(中学生の質問箱)

 

性の多様性ってなんだろう? (中学生の質問箱)

性の多様性ってなんだろう? (中学生の質問箱)

 

 セクシュアリティ教育を専門とする著者が、中学生と対話しながら「性」について一緒に考え、偏った認識に気づかせてくれる構成で、とても読みやすい。
3人のセクシュアル・マイノリティ当事者の体験談コラムからは、結局、大人の方が受け入れてくれにくいのがわかる。3人のうち2人は教師をしているが、特に教育現場の意識改革が遅れていることがとても残念。子どもたちに正直な生き方を伝えたいのに、同僚の先生に伝わらない、カミングアウトできないそうだ。本文でも学校の不自由さの例として、男子トイレの小便器はなぜオープンなのか。全部個室にすれば「男子は学校でウンコをするのが恥ずかしい」問題も解決できるのにと。そのとおり!ずっと昔から、小学生だって、もしかしたら大人でも抱えている変わらない悩みです。
また、オネエタレントばかりが注目され笑いの対象となっているのは、女性の地位が低いというジェンダー・ギャップの表れである一方、年間3万人という自殺者の7割が男性であるのは、男性自身も男らしさに縛られ弱音を吐けないからだという指摘は、いたたまれない。
性の多様性を考えるキーワードは「対等」と「選択肢が多いこと」。この2つは性のことに止まらず、様々な社会問題、生きづらさを解決してくれそうだ。
巻末に、理解を深めるおすすめの本・絵本・マンガ・映画のリスト、相談窓口・情報サイトの一覧あり。