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世界の教科書でよむ〈宗教〉

 

世界の教科書では各宗教をどのように記述しているかを紹介しているのだが、それは、まさにそれぞれの国が、宗教に対しどのような対応を取ろうとしているかを示したものになっている。政教分離アメリカでは、イスラム教を偏見なく描写するために、どういうエピソードを入れるかに苦心している。イギリスでは多様な生きた宗教を教えることに配慮し、キリスト教でもアフリカや南アメリカの聖像の写真もいれる。イスラム教やヒンドゥー教などでも、現在イギリスで暮らす、それぞれの宗教の日常を描く。フランスは厳格な政教分離、宗教の時間はないが、歴史教科書で歴史的な経緯を含めて公正に紹介しようとしている。ドイツは「分離型」で宗教の授業を公立学校でも実施。だが、道徳的な内容も含み、どのような行動をすべきかを考えさせる。イスラムの国トルコでも他の宗教についても、きちんとした紹介がある。ただ、多神教(仏教含む)に対しては、ちょっと微妙なニュアンスが示されている。仏教国タイでは、仏教中心の教科書があるが、文明の病理を解決するアクティブな宗教としてとらえられている。インドネシアイスラム中心だが、イスラム教徒として道徳的に正しい行いをすること(困っている人を助ける)を重視。フィリピンはカトリック教徒が大多数だが、キリスト教内部の多様性や、他の宗教にも配慮して愛国心としてまとめ上げている。韓国は1/3がクリスチャンだが、政教分離と多様だが、自覚的な宗教者が多い風土の中で、どの宗教もポジティブに書かれている。こうした各国の宗教教育を見ると、顧みて、それでは日本は? と考えたり、とても面白い、