児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

プラスチックプラネット

 

 現在とても注目されているテーマで類書が少ないという点では貴重。原書も2019年に出版されていることからも、対応の速さを感じる。ただ、この本を利用する場合の注意としては翻訳本であるためにp33の識別マークは日本と異なること(本にも明記されている)、またデータの典拠が本に記されていないのがいないのも気になった。「2050年までに海中プラスチックの重さが、魚の総重量よりも重くなってしまうと予測されています」などの衝撃的な予測やデータには絶対に典拠があるはず。子ども自身が確認できるような典拠データへのアクセス(HPアドレス等)や参考文献が欲しい。典拠データが英語論文のみなので原書にはついていたけど省略されたのだろうか? P47には「積極的に調べてみよう」とあるが、インターネットの信頼できる公的なサイトなどの案内はないので、司書がサポートしてあげたい。
内容は、個人的にも教えられる点が多かった。その一番はプラスチックがどんなに生活の中で利用されているかが確認できた点にある。ペットボトルやゴミ袋だけではなく洋服、家具、スマホにも使われているというのは意識していなかった(フリースもプラスチックだとか)。しかし、多様性があるだけに、作られたバイオプラスチックが、他のプラスチックにまざるとその全体がリサイクルできなくなる問題がおこる、かつ植物由来なので食べ物生産に影響を与える可能性があるという指摘もされ、ではこうした試みの効果は? 一方で「オーシャン・クリーン・アップのチームが60基フロート作ったら5年で太平洋ごみベルトの半分がきれいになる」などと書いてあると、けっこう簡単に解決できる??? など、ちょっと読んでいて混乱した。また、やはり翻訳書だと思うのは「大手スーパーに手紙を書こう」と呼びかけているところ。日本の本だったら、小・中学生が企業に規制を求める手紙を書いたり、SNS発信することを促したりはしなさそう。ここは逆におもしろいかも。全体に、もう少し深く(典拠データ込で)知りたい気持ちは残った。