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めんそーれ!化学―おばあと学んだ理科授業

 

 めんそーれ!化学―おばあと学んだ理科授業(岩波ジュニア新書)

       著者:盛口満  発行所:岩波書店   発行日:2018年12月20日

タイトルからわかるように舞台は沖縄だ。植物や昆虫などについてイラストをまじえて解説した著書も多いゲッチョ先生が、10年ほど前に那覇市の夜間中学で化学を1年間教えた授業記録。肉じゃが、ロウソク、コーラ(沖縄ではおばあもよく飲む)など身近なものを材料にした化学実験の数々も興味深いが、何か一言投げかけると生徒のおばあたちが口々に発言し始め、それを交通整理しながら、はたまたそこから展開させながら授業している様子がおもしろいし目からウロコが落ちまくる。戦中戦後の混乱で学校へ行けなかったおばあたちだけれど、その生活体験がハンパなさ過ぎるからだ。沖縄という土地、歴史、自然の中でおばあたちが子ども時代に経験したことは、授業を手伝う大学生ボランティアはもちろん、ゲッチョ先生も時にびっくりさせてしまう。おばあたちのおかげで、本書の”生活の知恵”度数が数倍上がっていると思う。現在は大学で、小学校教諭を目指す学生たちを教える著者は、子どもたちが「へえー」じゃなくて「ああ」と言うような授業ができたらいいねと伝えているそうだ。生活体験がますます乏しくなっている今の子どもたちに「ああ」と言ってもらうのはとても難しそうですが、未来の先生たちにがんばってもらいたいです。