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ドリーム・ギバー 夢を紡ぐ精霊たち

 

ドリーム・ギバー―夢紡ぐ精霊たち (ハートウォームブックス)

ドリーム・ギバー―夢紡ぐ精霊たち (ハートウォームブックス)

 

厚い本ではなく、字も大きめだが、さらりと読めるようで余韻が残る。主人公はリスレスト。元気いっぱいで、自分が何者なんだろうと興味深々だ。教育係のファスティディアスの手を焼かせている。二人の仕事は人間に美しい夢をおくることだ。その人間の身の回りのものから楽しく豊かな思いでを取りだしておくってやるのだ。だが、このタッチには危険が伴う。触れることにのめりこんだ仲間の中には悪夢を吹き込むシニスティードに変わってしまったものもいる。リステストはいろいろなことを思いつき、飛び回る。ついに教育係はより経験豊かなエルダリーにバトンタッチされた。そのことリスレストが担当していたおばあさんの家に、男の子が一人やってくる。虐待されてきたその子は、反抗的で、殺すだのピストルだの口走る。おばあさんが飼っている犬のトビーにも、エサを見せびらかしてもやらなかったりと意地悪をする。そしてシニスティードの働きが活性化して、男の子ジョンは悪夢に悩まされて夜、絶叫する。リステストはどうすればジョンが幸せに眠れるかを工夫するが、ジョンの言動の中でジョンが父親から受けていた虐待のむごさが、徐々に明らかになっていく。一方、ある女性の家で夢送りをしていたストラッピングは、美しい夢でその女性を少しづつ変えていく。乱雑な部屋は整理され、女性は仕事に出かけて生活を立て直し始める。夢にも出てくる息子、ジョンのために。だが、ジョンを狙ってシニスティードの大群がやってくる。無力なリステストのようなドリームギバーは、彼らと闘うことはできない。より美しい夢を送るだけだ。「記憶のかけら」と彼らが呼ぶ物語が人を救う力が、弱く、だが大きいことが伝わってきて魅力的。