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アイヌの昔話 雷を打ち負かした女の子 (イソイタク3)

アイヌの昔話 雷を打ち負かした女の子 (イソイタク3)
      文:寮美千子 絵:鈴木隆

      発行所:公益財団法人 アイヌ文化振興・研究推進機構

      発行日:2016年3月1日

 

シリーズ3巻目は、女性が主人公の3話。
「草の小舟で流された女の子」は、ドラマチックに展開するシンデレラストーリー。幼い頃に両親を亡くしおばに育てられている娘。居場所は家の隅の汚ない土間、着物は毛皮1枚のみで食事は外で犬と一緒、毎日たきぎ取りや水汲みにこき使われている。家には絹の布で仕切られた小部屋があり、おばが毎日そこへごちそうを運ぶのを娘は不思議に思っていた。一方、娘を助けてくれるのは、毎晩おばが眠った後に囲炉裏の下座から現れる白い髪のおばあさんで、まばゆい光を放ちながら娘を抱いてあたため、シト(おだんご)を食べさせてくれる。そうするうち娘は成長し年頃となったある晩、眠ったふりをしていると、小部屋から衣装ばかりが豪華な娘が出てきた。実は汚い娘と2人は異母姉妹で、姉である小部屋の娘がおばの実の子、妹である汚い娘の母親は狼のカムイ(神)の妹なのだ。姉妹には、父親の遺言によるいいなずけの兄弟がおり、妹のいいなずけである弟の方が広い土地を治める予定だったことから、おばは2人を入れ替えて実の娘は死んだことにして育ててきたのだった。あくる日、いいなずけの村から使いがやってきて、嫁入りの日が近いことを告げる。おばは汚い娘を草の小舟に乗せて大海原へと流してしまう。しかし娘は立派な屋敷に住む兄妹に助けられ、屋敷を訪れた若者(実は娘のいいなずけ)に川で体を洗ってもらい本当の美しい姿に戻る。2人はめでたく夫婦となり、子どもにも恵まれ幸せに暮らした。
「黒雲に飛びのって戦いにいった女の子」は、悪い心の者に襲われている村を助けるよう夢のお告げを受けた少女が、女性の戦いの衣装、兜、刀を携えて雲に乗り、雷のカムイの助けも得て勇ましく役目を果たす話。一方表題作「雷を打ち負かした女の子」では雷のカムイ兄弟は乱暴な存在で、人間の娘を妻とするため天界にさらってしまうが、雷のカムイ一族の親切な娘が人間の娘に助言し、雷のカムイ一族の燃える太陽や冷たい雲のなどの力試しに勝つことができ、無事に地上へ帰る。それからは雷のカムイを大切に祀ってお祈りを欠かさなかったので、幸せに暮らした。