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電話がなっている

 

電話がなっている (ニューファンタジー 3)

電話がなっている (ニューファンタジー 3)

  • 作者:川島 誠
  • 発売日: 1985/06/05
  • メディア: 単行本
 

少し古い作品を読むと、時代の変化を感じることがある。この作品、今の子が読んだら共感するところもあるだろうが、違和感を感じるところもある気がした。表題作『電話がなっている』は、人口が増えすぎた社会が背景だが、今は少子化が問題。そして15歳の選別試験で幼馴染の恋人と運命が分かれる苦しみを描いているけど、彼女は事故で障害を負ったために試験さえ受けられずに肉として処理されてしまうという設定は、やはり当時の障害者差別が背景にあるだろう(作者がではなく、社会の)。現在でも差別は続いているが、事故の怪我くらいで試験さえ受けられないというのは非現実的に感じる。ちなみに、ここで二人の間の初体験が語られるのだが、どうも初潮がきたとたんにチャレンジしたようだが、生理中だからか? コンドームを使っていないのも、今の子的にはどうだろうか? 受験へのストレス作品が多いのも、やはり時代かも。自慰や排便などがその発散のように描かれているけれど、そういうことをしている子がみんな男の子なのも、やっぱり時代かな。当時20代の著者による作品で、あとがきによると賛否両論があったようだが、たぶん「児童文学」として出版されたからであり、SFマガジンあたりに投稿したら別にショッキングな作品扱いはされなかったように思った。今の子が読んで、一番違和感がなさそうなのは『田舎生活』かも、とも思ったけれど、都会から田舎に移って都会生活から引き離された怒りが主題。ただ、ネットでほしいものを手に入れるからそれでストレス発散するかな? 作品が時代を超える難しさを感じさせられました。