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ぼくの弱虫をなおすには(2022課題図書小学校高学年)

 

ゲイブリエルは、自信をもって自分は弱虫だと言える! だから5年生になりたくない。高学年の校舎に移れば、いじわるな1年上級生のデュークやフランキーにいじめられるから。4先生の修了式の日も、二人のせいで閉じ込められ、せっかくの新しい服を汚し、式にも出られなかった。でも、そんなことを親にばらしたら、それこそ何をされるかわからない。代わりに二人に立ち向かってくれたのは親友の女の子フリータ。ところが、デュークの父親は、フリータに向かって「ニグロ」と、信じられない差別発言をした! ますます5年になる気が亡くなったゲイブリエルをフリータは励ましてくれる。怖い物リストを作って、怖いものを無くしていって、5年生になろうというのだ。まず「クモ」が怖いというゲイブリエルにクモを飼うことから始め、二人はいろいろチャレンジする。いつも不機嫌で怖かったフリータの兄テランスも、よく話してみれば怖くないことがわかったので、自信を持ったゲイブリエルは、デュークの父も話せばわかるのかと思うのだが、勇気を出して話しかけたフリータに対し「KKKに気をつけろ」と言ってきた。実は、以前いた街からKKKのせいでこの街に来た過去があるフリータ。ゲイブリエルの父親は、怯えるフリータを見て、フリータの両親とも話し、黒人差別を掲げる大統領選候補者ジミー・カーターの応援集会で、この問題を取り上げようと動き始めてくれた。怖いことはやっぱり怖い。でも、大切なフリータを失うことはできない。怖さを抱えながらも前に進んでいくゲイブリエル。時代背景は1976年と古く、しかもアメリカが舞台なので、子どもたちには少し背景がわかりにくい面はあると思うが、元気で直情的なフリータと、気が良いけれど人種の偏見からは自由なゲイブリエルの友情は、十分共感できると思う。