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猫の楽園 ゾラ ショートセレクション

 

 不劇の死を迎えた少女の館で、その少女の幽霊を見た「アンジュリーヌ」や、宣伝文句を皮肉った「広告の犠牲者」。じゃまな夫を殺したが、結局その陰におびえる「恋愛結婚」。家猫からノラ猫へと境遇を変えてみて自分の生活を見直す「猫の楽園」など、読みやすいし、このくらいの話なら考えられそうな感じがしたが、そうしたちょっと俗っぽさがゾラの特徴か? 「オリヴィエ・ベカイユの死」は、早すぎる埋葬で生きながら埋められてしまう恐怖、「血」は、戦場での兵隊たちの悪夢で、ストーリー展開がどう展開するのかとちょっとハラハラ。「コックヴィル村の酒盛り」は、ちょっとあっけらかんとしたホラ話めいた物語。ゾラの長編は読んだことがないのだが、こういう作家ならチャレンジしたら読めるかも、というような取り付きやすさがある。ちょっと読書家の中高生なら、これを入口として長編にチャレンジするかも。