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わたしたちのカメムシずかん やっかいものが宝ものになった話(2021年課題図書 小学校中学年)

 

 岩手県葛巻町立江刈小学校での実践をもとにした本。著者は虫をテーマとした作品を発表しているフォトエッセイスト。特別な産業はないけれど堅実に暮らすこの町では、カメムシが越冬のため屋内に入って来る。臭いにおいを出し、農作物を荒らす害虫としてみんなに嫌われているカメムシだが、児童わずか29人という町の小学校の校長先生はカメムシと一口にいっても様々な種類がいることに気が付いた。「よく見ると、形や色が違う。私も知らないけど、みんなで一緒に調べましょう。」と校長先生が提案。調べ始めると、次々にいろいろな種類が見つかりました。しだいにみんなは夢中になりカメムシについていろいろ調べ始めます。「カメムシはぼくらの宝もの」と言った子どもの言葉から、校長先生は自分たちのカメムシずかんを作ることを思いつきました。名前が間違っているといけないと、できた図鑑を専門図鑑の出版社に送ると、研究者がとても喜んで学校に来て子どもたちと話をしたいと言ってくれました。思いがけない研究者との交流、そして子どもたちが意欲をもってカメムシ研究にますますはりきるラストが魅力的です。それまで見過ごしていた小さなことの再発見で新しい世界が広がる喜び、などをネタにしたり、実際にカメムシをさがしてみたりして感想文にもっていけるかもですね。オマケですが、イラストで見ると校長先生は女性だったようです。女性だって虫が嫌いではないことがわかりますよね!