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スアレス一家は、今日もにぎやか

 

2019年ニューベリー賞受賞作。11歳のメルシはキューバ移民の家族だ。祖父母、叔母、メルシの家族の三軒の家が一緒の敷地に立っていて、とりわけ祖父とは仲が良い。ペンキ職人の父さんと理学療法士の母さんは頑張って仕事をしている。夜間の大学で資格をとった母さんは、学歴がなにより大切だと言い、兄さんのロリは期待を上回るほどの大秀才。メルシだって優秀でロリと一緒に名門私立に奨学金で入れてもらっているのだが、正直ついていくのがやっと。しかも、ここのところおじいちゃんのようすがなんだか変。クラスのボスキャラで金持ちのエドナには睨まれている。転校生の面倒を見るボランティアはやらなきゃいけないのが悩み。大好きなサッカーもしたいのに、叔母さんの双子のめんどうをみたりと忙しいというので母さんから認めてもらえない。そして、おじいちゃんのようすはますます変になり、みんなは何かを隠している。クラスでも本格的にシカトされ、ついに爆発してしまった! 大家族で愛されて育ったメルシ。自分のやりたいことが思うようにやれないことに激しく反発するが、祖父が認知症であることを知って受け入れ、子ども時代を卒業しいく様子がていねいに描かれていて説得力がある。人生を切り開くために変化を受け入れなければならない、その変化には祖父や祖母の老化も入っていると気づくようすは痛切だが、生きるパワーのあるメルシ。これからも前進していくでしょう!