児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

子どもと本

 

この度、文化功労者に選ばれた松岡享子さん。子どもと本に関わる人たち、親として仕事としてボランティアとして、ベテランでも初心者でも、また本にそれほど興味のない人も、子どもに関わるすべての人へ向けて綴っています。
1章は、自身の読書体験、疎開先での生活・自然体験が人生を決めたということ、児童図書館員としてスタートしたアメリカのイーノック・プラット図書館分館で植えつけられた土台のこと。
2章。子どもを本好きにするには、「暮らしの中に本があること」「おとなが本を読んでやること」の2つ。 私は通信制高校で教えているので、特に本章での、本嫌いな10代は多くいるが「三、四歳で、絵本を読んでもらうのがきらい、お話を聞くのはいやという子はいません。」という言葉、そして昔話について述べた3章の、「現実とは別に、自分だけの内なる世界をもつことが、今を生きる上でどんなに大切か。」「そこに逃げ込み、休息し、新しい戦いに備えて力を蓄える場」ということを、強く切実に思います。 また3章では、おとなたちが唱える昔話非難(残酷性、決まりきっていておもしろくないなど)をすっきり解消してくれます。
4章は、図書館が子どもの本を選ぶ責任。選ばれたものが並んでいれば子どもは自分の好きなものを見つけられること。そして、子どもが自らは手に取らないであろう本との出合いをつなぐ「人」(=それが専門の児童図書館員)がいること。それが確立されていない日本の現状(5章)。その改善を強く願う言葉で締めくくられています。 (は)