太平洋戦争中、敵国日本という「ふさわしくない祖先をもつ」として収容所生活を強いられた日系二世の子どもたちに、本を送り心の支えとなったアメリカ人図書館司書がいた。クララ・ブリード。日系人の多く住むカリフォルニア州のサンディエゴ市立図書館で初の児童担当司書だった。図書館の常連だった子どもたちが収容所へ送られる日、見送りに行き、自分の住所を書き切手を貼った葉書を手渡して回った。「手紙をちょうだいね」。
本書では、子どもたちから送られた”Dear Miss Breed”で始まる手紙を中心に、著者による当事者へのインタビューや1980年代に行われた強制収容の調査委員会公聴会における証言、ブリードが「図書館ジャーナル」や児童書専門書評誌「ホーン・ブック・マガジン」に書いた記事、さらには当時のルーズベルト大統領夫人による新聞コラムなども織り交ぜて、日系人強制収容の事実が克明に解き明かされる。
ブリードへ手紙を送った子どもたちは幼児から20代の青年までと幅広い。その年齢によって収容への受け止め方はちがい、青年の方がアメリカという国に裏切られた、憲法さえ自分たちを救ってはくれないという喪失感は強かった。ブリードは、本のほかにもキャンディや文具、布など子どもたちの要望に応えて様々な物を送り、外とつながっている希望を子どもたちに与えた。
第15章、収容から50年の同窓会でかつての”子どもたち”は振り返る。あきらめずに自由を勝ち取ろうとするとき、本から得た知識や「読む力」、そして信頼できると思える大人の存在がとても大切だった。ブリードさんは「本や文学がいかに子どもたちの人生と心に重要か」「知的な面だけでなく、感情的な面でも、生涯を通して役に立つことを教えてくれた」。これらの言葉は、子どもに本が大切と信じる私たちを奮い立たせてくれます。 (は)