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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

台所のマリアさま

 

自分の中に閉じこもるグレゴリーは、ウクライナ人のお手伝いのマルタにだけは、すぐに心を許した。故国を離れイギリスへ来て22年、友人にも家族にも会わず、マルタは淋しすぎると、母親は言う。グレゴリーはマルタの幸せと、ずっといてもらいたいと願う気持ちから、マルタがウクライナの家にあったと話してくれた台所の「いい場所」―金や光る石、美しい刺しゅうで飾ったマリアさまと幼子イエスの絵を置く―を自分がつくろうと心に決める。
それからのグレゴリーの行動は、これまで内に秘めていた力を花開かせるよう。聖画像とはどんなものか、大英博物館や高級宝石店に見に行ったり、材料とするきれいな端切れやリボン、お菓子の包み紙を手に入れるために、お店のおばさんに初めて話しかけたり。幸せでないマルタのこと、「いい場所」のこと、自分には十分なお金がないこと・・・を、自分のもてる言葉で伝えようとするグレゴリーの姿は、これまでとは違う。それを真剣に受けとめてくれるおとなと、一緒に行動してくれる7歳の妹(グレゴリーもまだ9歳!)が、とてもいい存在。そして、挿絵がとにかく美しい。 (は)