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ダリウスは今日も生きづらい

 

高校2年のダリウスは、共感しずらい主人公だろう。確かにイラン出身の母とゲルマン系アメリカ人の父という出自のせいで差別的な扱いを受けることもあるが、つねにネガティブな感情から抜け出せないので。鬱を患っていて、薬を飲んでいる。父親が自分に失望していることを感じて悲観的で、大好きな妹にさえ嫉妬してしまう。そんな時。母の祖父が病に倒れたことを知り、生まれて初めてイランを訪れることになった、暖かい祖母の歓待。初めてできた自分を受け入れてくれる親友。そうした中でも、ダリウスの中では恐怖が渦巻いている。父親もまた鬱病であり、病と闘っている。父との溝のきっかけが病のせいであることに気がつくダリウス。背景の鬱病のことを理解していないと、ダリウスは過剰に悲観的になっているように見えてしまいそうで、背景の解説がないことがちょっと気になった。後半になって、父親が病気のせいで死まで追い詰められた過去があることがわかり、やっと読者である私にもちょっと深刻さがわかってきた。単なる悲観的な子ではなく、自分でもどうにもならないダリウスの苦しみというテーマはあまり類書がない。著者自身が鬱病歴があるとのこと。単純に克服できないこうした精神的な病気については、もう少し知りたいと思った。だが、そうしたことを抜きにしてもイランでの大家族や周りとの暖かい交流のようすなど、読みどころは多い。