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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

幸せな王子 オスカー・ワイルドショートセレクション

 

「幸せな王子」「わがままな巨人」は、比較的知られた物語だと思うが、きちんと読んでみると、あらためて描写も美しく。印象的な物語。「ナイチンゲールとバラの花」もナイチンゲールの自己犠牲の物語ではあるが、皮肉めいた雰囲気が少し漂う。そして「カンタヴィル家の幽霊」はイギリスの伝統ある幽霊が、アメリカ人に買い取られてすっかり調子が狂うドタバタに始まりながらも、一家の優しい長女が幽霊が安らかに眠るために手を貸すハッピーエンドにつなげている。そして「アーサー・サヴィル卿の犯罪—義務とは」も殺人犯になると予言されたせいで、懸命に早々に殺人を終了して幸せな結婚に向かおうとこころみるが、手間取ってという皮肉な物語。頭の回転が素早くて、だけれども抒情性もあるワイルドの魅力が楽しめる。